2 代謝・栄養・侵襲 用語ガイドライン
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目 次 |
和文表記 |
英文表記 |
略語 | 解 説 ・ 備 考 |
【さ行】 | |||
サイクリックTPN | cyclic TPN | 種類の異なる輸液剤を順繰りに投与する静脈栄養. | |
在宅経腸栄養法 | home enteral nutrition | HEN | 患者自身が在宅で口または鼻から胃内まで5~10Frの経管栄養チューブを挿入し,または胃瘻や腸瘻から栄養を投与する方法である.成分栄養剤や低残渣食を用いる.必須脂肪酸や微量元素の欠乏に注意する.短腸症候群,炎症性腸疾患患者などが,HENの適応となる. |
在宅静脈栄養法 | home parenteral nutrition |
HPN | 長期経静脈栄養管理が必要な患者のQOLを高めるため在宅で静脈栄養を行うこと.慢性疾患から悪性腫瘍末期の患者までその適応はひろい. |
サイトカイン | cytokine | 生体内で細胞間のコミニュケーションをつかさどる分泌蛋白質で体液を通って細胞表面のレセプターに結合しその活性を発見するものの総称. | |
細胞障害スコア | cellular injury score | CIS | 血中尿酸値,osmolarity gap,動脈血ケトン体比(arterial ketone body rate:AKBR)から算出. |
サザン解析 | Southern blot analysis | 特別なDNA切片の同定および癌やヘモグロビン疾患の診断に用いられる遺伝子分析法.Southern EMにより開発された.アガロースゲル電気泳動によって分画されたDNAをニトロセルロースフィルターに移し,次いで,フィルター上のどのDNAバンドが,目的とする特定の塩基配列をもったバンドであるのかを,放射性同位元素で標識された相補的塩基配列をもったDNAまたはRNAをプローブとして用い,フィルター上でのハイブリダイゼーションで,検出する方法.この方法が開発された後,同様の方法をRNAの検出にも用いるようになったが,これをサザン法に対してノーザン法(Northern method:Northern blot analysis)といい,タンパク質に適用した場合,例えば,ラベルした抗体をプローブとして用い,抗原の検出を行うような場合はウエスタン法(Western method:Western blot analysis)と呼ばれている. | |
サリーベラループ | Thiry Vella fistula | Thiry L,Vella Lの2名によって開発された.実験動物において作成される腹腔内の腸管から遊離,独立した腸管グループ(係蹄)で,小腸の一部を遊離し,この腸管分節の両端を腹壁の2ヶ所に開口させたものである(残りの腸管は腹腔内で端端吻合).腸管の吸収や分泌の研究などに用いられる. | |
酸化還元電位 | redox state | 化学反応で相互の酸化と還元が起こる現象.reduction‐oxidation.NAD + /NADH比で表される.ミトコンドリアの酸化還元電位(Mt redox state)と細胞質の酸化還元電位(cytosol redox state)とがあり,前者はアセト酢酸(acetoacetate)とβ-水酸化酪酸(β‐hydroxybutyrate)の比(ケトン体比:ketone body rate:AKBR)によって捉え得るという. | |
酸化ストレス | oxidative stress | reactive oxygen species (ROS)の産生速度が処理能力(Vit.E,酵素,細胞防御)をまさる時に生じる. | |
酸性フォスファターゼ | acid phosphatase | ||
酸素消費量 | oxygen consumption | VO2 | VO2=C(a-v)O2×CO×10 (ml/min) CaO2=arterial blood O2 content =(Hb×SaO2×1.39)+(0.0031×PaO2) CvO2=mixed venous blood O2 content =(Hb×SvO2×1.39)+(0.0031×PvO2) |
酸素負債 | oxygen debt | 運動や無呼吸からの回復期に運動(または無呼吸)前の安静時代謝量レベル以上に体内に取り込まれる酸素量をいう.周囲の環境からの酸素摂取が好気的代謝には不充分であった期間に消耗したエネルギー貯蓄を補うものである. | |
酸素ラジカル | oxygen radical | ラジカルとは不対電子をouter orbitalに持つ原子で他のROS(reactive oxygen species)を産生するが拡散距離は短い.種々の細胞毒性(蛋白融解,DNA障害,膜障害)を生ずる. | |
三頭筋皮下脂肪厚 | triceps skin fold thickness |
TSF | |
CVポート | これを,皮下に埋めこんでおき,患者自身または介助者が,このポート内に輸液ボトルからの輸液ライン先端の針を経皮的に刺入することによって随時輸液を開始できる.在宅静脈栄養法や抗癌剤の投与などに用いられる.専用ポートが市販されており,局所麻酔下でも設置可能である. | ||
脂質過酸化物 | lipid peroxides | LOOH | free radical chain reactionはさらに以下の反応を起こす.L*+O2→LOO*,LOO*+LH→LOOH+L*脂質過酸化物(LOOH)の1電子の再編(rearrangement)が起こると脂質の分解が生ずる.分解産物のmalondialdehydeが血中,尿中で検出され,free radical damageの指標とされる. |
システイン | cysteine | Cys | |
質量分析計 | mass spectrometry | 第一の質量分析計で試料のイオン化をおこない特定の質量数のイオンを選んで加速し衝突活性化(collision activation)などで分解させ生成したフラグメントイオンを第二の質量分析計で分析し最初のイオンの構造を解析する方法.ペプチドなどのアミノ酸配列の決定にも利用される. | |
至適配合比 | optimal ratio | 適正配合比(可). | |
ジペプチド | dipeptide | ||
脂肪過酸化反応 | lipid peroxidation | L* | 多価不飽和脂肪酸(LH)の水素がフリーラジカルによりとられlipid radical(L*)が産生される反応. |
脂肪乳剤 | lipid emulsion | 水に溶けない脂肪(トリアシルグリセロール)を界面活性剤である卵黄レシチンで機械乳化したもの.リン脂質である卵黄レシチンの中に脂肪が小滴の形で取り込まれている. | |
脂肪分解 | lipolysis | triacylglycerideが脂肪酸とグリセロールに分解される. | |
重回帰分析 | multiple regression analysis |
一方の変数の値から他の値を予測する分析方法を回帰分析といい,前者を説明変数(explanatory variable),後者を目的変数(criterion variable)という.説明変数が二つ以上の場合が重回帰分析で,最少二乗法で求められる. | |
重症感染症 | severe infection | 高度感染症(不可). | |
腫瘍壊死因子 | tumor necrosis factor | TNF | サイトカインの一つ.抗癌作用を有する体内ペプチド.人工的にも合成される.エンドトキシン等の毒素に反応して体内で産生される.好ましからざる作用としては,toxic shockや悪液質がある. |
受容体 | receptor | (1)抗原抗体反応に関するレセプター,(2)感覚神経末端の様々な(受容器)レセプター,(3)ホルモン作用が発現するときに,ホルモンが付着する必要がある特異な蛋白部分(receptor site),これは細胞質または細胞膜に存在する. | |
傷害 | injury | 構造的な欠陥・損傷. | |
障害 | dysfunction | 機能的な欠陥・損傷. | |
消化管粘膜透過性 | intestinal permeability | ||
消化管附属リンパ組織 | gut associated lymphoid tissue |
GALT | 腸管粘膜の上皮内,粘膜固有層,パイエル板に分布したリンパ球集団で,身体のなかで最大の免疫機構を備えている. |
消化態栄養剤 | digested diet | 消化を必要とせず,小腸から全て吸収される化学的に明らかな成分で構成される栄養剤. | |
硝酸塩/亜硝酸塩 | Nitrate/Nitrite | 有機硝酸塩または亜硝酸アミルなどの亜硝酸ポリオールは,狭心痛を緩解させる血管拡張剤である.しかし,これがどのような機序で動脈,静脈の平滑筋を拡張させるのかについては必ずしも明らかではない. | |
晶質液 | crystalloid solution | “膠質(colloid)”に対し,塩類,ショ糖,尿素などは,拡散速度が大きく,細胞膜を自由に通過することができ,しかも容易に結晶の形で得られることから,1861年Grahamがcrystalloidと名づけた.アルブミン,デキストラン,スターチなどのコロイドを含まない,乳酸加リンゲル液などの電解質液を,コロイド液に対して一般に晶質液と呼ぶ. | |
上皮成長因子 | epidermal growth factor |
EGF | Stanley Cohenにより発見された増殖因子(growth factor)でprotein tyrosine kinase活性を有するEGFに特異な受容体を活性化し細胞増殖を促進する. |
静脈栄養 | parenteral nutrition | PN | 経静脈栄養(可). |
食餌性核酸欠乏 | dietary nucleic acid deficiency |
自然食栄養では動物および植物細胞を摂食しているために,核酸も同時に摂取しているが静脈栄養や成分栄養では核酸が含まれていないために核酸欠乏状態がおき,免疫機能などが低下する可能性が示唆されている. | |
食物線維 | dietary fiber | 人間の消化酵素では加水分解されない植物性多糖類やリグニン. | |
心原性ショック | cardiogenic shock | ||
深在性真菌症 | deep‐seated mycosis | 内臓真菌症とも言われる.皮膚,粘膜などの表在ではなく体内に感染巣を有する真菌症.Compromized hostに日和見感染症として見られる.長期のTPNにも合併することがある. | |
心臓性悪液質 | cardiac cachexia | 慢性鬱血性心不全で極度の羸,筋肉萎縮,四肢末梢の浮腫などを呈する状態,栄養摂取の障害,末梢循環不全,代謝が原因で起こるとされる. | |
心タンポナーデ | cardiac tamponade | 心臓タンポナーデ(不可). | |
身長体重比 | weight for height | ||
推奨栄養所要量 | recommended dietary allowance |
RDA | |
スーパーオキサイド | superoxide | 分子状の酸素(O2)が,ヒポキサンチン(hypoxanthine),キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)と反応する系などにより,酸素ラジカル(oxygen free radicals)が生成される.これらの一つが,(1)superoxide radical(O2-・)である.このほか,(2)hydrogen peroxide(過酸化水素水:H2O2)(3)hydroxyl radical(OH ・ ),など種々のものがある.(1),(2),(3)はそれぞれ,電子(e - )1,2,3ケで還元されている. | |
スカベンジャー | scavenger | “コンドルやジャッカルなど,腐肉を食う動物”,“街路掃除人”,“ゴミをあさる人”,などを指す.医学用語としては,free radical scavenger(遊離ラジカル消去剤:superoxide dismutase,catalase,Vit Eなど),scavenger cell(組織の破片や侵入病原体を貪食する細胞)などのように用いられる. | |
生体抵抗検査 | bio‐impedance analysis |
BIA | 二点間で微弱な電流を通じ電気抵抗を測定しbody compositionを評価する方法でfat,fat free mass,TBW(total body water),ECW(extracellular water)などの測定が可能であるが,精度に関しては疑問視する論文も多い. |
生体防衛機能 | host defense mechanism |
一連の生体の防御システムである.物理的なバリア(皮膚,粘膜)と免疫反応があり,感染性微生物から生体を守っている.local host defenseとsystemic host defenseがあり,後者には貪食細胞,免疫系,molecular cascade(補体,凝固,キニン)が含まれる. | |
成長因子 | growth factor | ある種の細胞の分裂と分化を刺激するサイトカインまたは,高度に特異な蛋白をいう.growth factorsは,T‐cell,単球,血小板ほか,いろいろな細胞でつくられる.骨髄の幹細胞の分裂と分化を促進するgrowth factorはcolony‐stimulating factorと呼ばれる.現在までにplatelet‐derived growth factor(PDGF),epidermal growth factor(EGF),fibroblast growth factor(FGF),transforming growth factor‐α(TGF‐α),transforming growth factor‐β(TGF‐β)が知られている. | |
成長ホルモン | growth hormone | GH | 脳下垂体前葉より分泌され,肝でのIGF-1(insulin like growth factor-1)合成を促進させ,骨の発育を促進させるホルモン.近年,侵襲下でその分泌が亢進し,強力な蛋白同化作用を発揮することが知られるようになった. |
成分栄養剤 | elemental diet | ED | 窒素源として結晶アミノ酸あるいは低分子ペプチドが使用されており,すべての栄養成分が化学的に明らかであり,消化を必要としない経腸栄養剤. |
セサミン | sesamin | ごま(sesame)の種子に含まれる微量成分でラット乳癌発症抑制作用,生体内抗酸化活性,免疫賦活化作用,及び抗高血圧作用などが知られている. | |
接着因子 | adhesion molecule | 細胞どうし,または細胞と細胞外基質の接着は接着分子と総称される分子群により仲立ちされる.同種細胞間接着ではカドヘリンファミリー,免疫グロブリンスーパーファミリー,異種細胞間接着にはセレクチン,CD44,免疫グロブリンスーパーファミリーが,細胞と基質間接着にはインテグリンファミリーが関与している. | |
セリン | serine | Ser | |
セレノシステイン | selenocystein | セレンタンパク質の含有するセレノシステイン残基は,いずれもオパール(TGA:チミン,グアニン,アデニン)終止コドンでコードされている.TGA認識の機構やタンパク質へのセレン(Se)の特異的取り込み機構に関する研究において,セレノシステイン残基が注目されている. | |
全身性炎症反応症候群 | systemic inflammatory response syndrome |
SIRS | 炎症に対する生体の全身的な反応を表現する概念である.細菌感染症のほか,外傷,熱傷,膵炎などおいても,サイトカインをはじめとする様々なメデイエーターにより共通する炎症反応が惹起されていることが明らかとなり,提唱された.実際の患者においてSIRSは,脈拍数,体温,血球数など簡単な指標により判定される. |
全身蛋白代謝回転 | whole body protein turnover |
放射性または安定同位元素などを用いた蛋白代謝動態解析における概念である.一日の体蛋白の合成量と分解量とが一致している定常状態(steady state)では,体蛋白合成速度(S:g/day),体蛋白分解速度(B:g/day)と蛋白代謝回転(whole body protein turnover:T)とは等しくなる.一日の体蛋白の合成量と分解量とが一致しない非定常状態(non‐steady state)では,SとBのうち少ないほうをTとする(1953年:Reiner)古典的定義があるが,ほかにBをもってTとするもの等,その定義については,現在なお一致したものは無い. | |
選択的腸管浄化法 | selective gut decontamination |
口・咽頭,胃腸管における好気性潜在的病原菌のコロニー化を防止することにより,全身の感染を予防する一つの方法である.主として,ICU領域の患者に対して内因性重症感染症,MOFの予防を目的として試みられている.トブラマイシン,コリスチン,アンフォテリシンBなどを経鼻胃管から胃内に投与したり,また,口腔・咽頭粘膜に塗布する. | |
線溶系 | fibrinolytic system | プラスミノーゲンをtissue plasminogen activator(t‐PA)が活性化してプラスミンとする系. | |
総括的機能 | integrity | ||
阻血再灌流障害 | reperfusion injury | 虚血後の再灌流を契機として臓器障害が進行するparadoxicalな現象をさす.心臓,脳の虚血性疾患や移植臓器の血流再開の際にも生ずる.虚血によるcalcium overloadと活性酸素が重要な役割を果たす.例えば肝臓の温阻血後再灌流早期(1時間)にはクッパー細胞や酸素フリーラジカル,エイコノサイトが,後期(6~24時間後)には好中球浸潤や肝壊死が関与し細胞障害を生ずる. | |
組織因子 | tissue factor | TF | 細胞膜表面に存在するVII/VIIa因子受容体で,細胞表層におけるVII因子の活性化とVIIa因子によるX並びにIX因子の活性化に関わり,外因性凝固反応の実質的な開始機構を担っている. |
組織因子阻害剤 | tissue factor pathway inhibitor |
TFPI | 組織因子の制御因子で三つのKunitz型阻害領域をもつプロテアーゼインヒビターで,活性化されたXII因子およびX因子と複合体を形成してその活性化を阻害する. |
損傷重症度スコア | injury severity score | ISS | 外傷患者の重症度を判定する指標である.まずAIS(abbreviated injury scale)により顔面頸部,頭部,胸部,腹部,四肢骨盤及び体表の6か所に分け1(minor)から5(fetal)に分類する.AISの点数の思い3項目各々の得点の2乗の和がISSである. |