新理事長挨拶 (平成30年9月)

土岐 祐一郎

 大阪大学大学院 消化器外科 教授


 このたび平成30年度第1回理事会で、福島亮治先生の後任として理事長に選任いただきました。本学会は、1965年(昭和40年)に前身である「術後代謝研究会」が「外科手術前後における患者の代謝・栄養管理の研究成果を自由に討論する」事を目的として第1回が開催されたことに始まり、昭和56年の第18回学術集会より『日本外科代謝栄養学会』に移行しています。創設以来、半世紀を超えた歴史と伝統のある本学会の理事長を務めさせていただくことの、その責任の重さをあらためて痛感している次第です。
 本学会は、外科・救急およびその関連領域における代謝・栄養学ならびに侵襲学の教育,臨床および研究を通じて国民医療の向上に貢献することを目的としています。近年、我が国では高齢化に伴い、特に外科では周術期の侵襲栄養管理の重要性が増しております。フレイル、サルコペニアといったキーワードを目にする機会は大変多くなっています。また救急や小児外科の領域においても代謝栄養の全身管理と予後の向上は密接な関係にあることが確立してきました。このように侵襲・代謝栄養学は様々な局面で重要な学問であるにも関わらず、最近はこれを基礎的な研究として志す医師が減少しているように思います。医療安全の面からは極めて重要ですが、内視鏡手術のように個人として華やかにもてはやされる機会が少ないので縁の下の力持ちのように地味な学問になっているのかもしれません。前任の福島理事長は侵襲・代謝栄養学の衰退を強く懸念し、外科侵襲栄養学の裾野を広げるべく、多くの関連学会と交流を持ち、日本外科代謝栄養学会がその中心になって学問を高めてゆくことを期待されていました。私もこの路線を引き継いで、まずは外科侵襲栄養学に関係する様々な学会、研究会と連携することを第一の目標にしたいと思います。
 また、基礎的な研究を患者利益に還元するためには、臨床試験を通じてエビデンスを確立することが必要です。そしてエビデンスは診療ガイドラインなどを通じて多くの医師、医療関係者に浸透し我が国全体の成績を向上することでしょう。しかし、残念ながら、我が国で行われる代謝・栄養学の介入研究は小規模なものが多いのが現状で、そのためにアイデアは優れていても有意差がでない、もしくは有意であってもエビデンスレベルの低いものにとどまっています。癌や成人病などのように製薬会社からの大量の資金サポートがないこともその一因です。この現状に対して日本外科代謝栄養学会は何らかの形で会員の臨床研究をサポートしたいと考えています。潤沢な資金はありませんが、志を同じくする研究者を多く集め、大規模な研究を行う場としてお役に立ちたいと思っております。
 外科医減少の時代にあっても学問の重要性は何ら変わることはありません。学問を通じて医学の進歩に貢献することは、医師が他の職種とは異なることを決定づける大きな使命であります。今後も伝統を守り、学会をさらに発展させていくために、会員の皆様のご支援・ご協力と積極的な学会活動への参加を、心からお願い申し上げます。






  本学会の歴史

1965年 外科手術前後における患者の代謝・栄養管理の研究成果を自由に討論することを目的に、 20施設(17大学と3病院)が参加して「術後代謝研究会」を設立した。
1981年 急速な会員増、発表演題内容の充実にともない、第18回学術集会より「日本外科代謝栄養学会(Japanese Society for Surgical Metabolism and Nutrition)」と改称した。個人会員制の学会に改組し、会則の整備をおこなった。機関誌も、プロシーディングス・スタイルの「術後代謝研究会誌」を原著論文中心の「外科と代謝・栄養」とした。
1983年 会則を改正し、1) 選挙による役員の選任と任期制を導入、2) 評議員の選考基準および評議員会の役割を付加した。
1984年 学会主要会員の協力を得て、田中 大平・近藤 芳夫 編集「外科代謝栄養学」(文光堂)を発刊した。
1988年 機関誌掲載の優秀論文に学会賞を授与することとなった。
1990年 学会25周年記念号を発刊した。
1993年 機関誌を隔月発刊とした。
1994年 本学術集会にInternational Sessionを設けた。
2000年 TPNビタミン検討委員会(岡田正委員長)が、ビタミンB1欠乏症の多施設臨床研究結果を報告した。
2001年 アジアの若手研究者を対象としたTravel Grant for Young Investigator制度を創設した。
2003年 学会賞に英文原著も対象となった。
2006年 第43回学術集会より、日本静脈経腸栄養学会との共催で、「NST医師教育セミナー」を開催した。
2009年 第46回学術集会より、日本アミノ酸学会との合同シンポジウム、およびJPEN推薦論文の募集を開始した。
2010年 学会主催の教育セミナーが開催された(第1回セミナー担当:千葉大学、織田成人先生)。